ニワトコの杖の歴代所有者と所有権は?製作者や作られた時代についても!

ロウ・ファンタジー小説の中でも近年最も人気な作品である「ハリー・ポッター」シリーズ 

最終章「死の秘宝」にてその名前が登場し、物語をめぐる重要な要素の一つとなる「ニワトコの杖」についての記事。

ファンタジー小説・映画において、その「魔法」の在り方や使い方はその作品によって異なる。「指輪物語」ではガンダルフなどの賢者が物語の要所にて使用している。「ゲド戦記」では「名前」が重要なファクターとなっており、魔法の濫用はいましめられている描写であった。「ハリー・ポッター」では「杖」が重要な要素であり、魔法を使用するにあたり「杖」に強く依存しているように見える。今回は、「ハリー・ポッター」の第七巻「死の秘宝」よりその名前が出た「ニワトコの杖」について注目していきたいと思う。

「ハリポタ」における杖と魔法使いの関係

「ハリー・ポッター」シリーズの作中における魔法の行使は、基本的に魔法使いが杖を手に持ち指向性を定めラテン語からなる呪文(日本語訳の小説では「ラテン語+日本語」となっている)を唱えることでなされる。

魔法の杖は、杖によってそれぞれ全く異なる材質・性質であり、魔法使いは自分との相性の良い杖を用いて魔法を使うとされる。

第一作「賢者の石」において、熟練の杖作りと称されるオリバンダー老人は、杖に用いるための木と強力な魔法生物の一部を杖の芯材に用いることで魔法の杖としていた。

 

例を挙げると、主人公ハリーの杖は「柊と不死鳥の尾羽根」の組み合わせである。作中にてオリバンダーは様々な杖をハリーに持たせ、ハリーとの相性を確認したうえで、その杖に至った。オリバンダー曰く「杖が魔法使いを選ぶ」ということであり、この設定は第七巻「死の秘宝」まで地味に活かされることになる。

杖の忠誠心について

「杖が魔法使い選ぶ」と先述したように、オリバンダーは作中にて杖が意志を持っているかのような言動をする。

具体的には「杖は持ち主を選び、その持ち主に対し忠誠心を持つ」という旨の発言をしている。

またこの忠誠心は不変ではなく、その持ち主より「勝ち取る」ことによって、次の持ち主に移るという。

杖の忠誠心を得ていない場合、魔法を効果的に行使できないという描写もなされる。

 

なお「勝ち取る」ということは、盗み出して手に入れるということではなく、直接相対し、決闘などの過程を経て杖を手に入れることが重要と説明がされる。

死の秘宝としてのニワトコの杖について

作中における魔法の杖の中で、最も強力な杖とされているのが「ニワトコの杖」である。

第七巻「死の秘宝」では、この杖の伝説と所有者をめぐる説明や考察がなされる。

作中の童話「三人兄弟の物語」においてのニワトコの杖のあらましはこうだ。

一番上の兄は戦闘好きでしたから、存在するどの杖よりも強い杖をくださいと言いました。決闘すれば必ず持ち主が勝つという、『死』を克服した魔法使いにふさわしい杖を要求したのです!

上記は三兄弟が死の概念を擬人化した影を出し抜き、長兄アンチオクが「死」からニワトコの杖を貰う場面である。

「死」はその他に「蘇りの石」「透明マント」を下の兄弟に与えた。

この三つのアイテムが「死の秘宝」となるのだが、物語中盤にて、ハリー達は童話や「死の秘宝」を求める人の話などから、「秘宝」が伝説上の品ではなく、一部は実際に存在するとの結論に至る。

ニワトコの杖の歴代所有者と所有権の変遷について

ダンブルドアは「死に秘宝」はその三兄弟がそれぞれ作ったのではないかと考察しており、ニワトコの杖の最初の所有者は制作者である長男アンチオクであると推察している。

その童話の続きでは、アンチオクは因縁があった敵を殺害し、そのまま酒に酔って酒場で杖の力を喧伝してしまう。

その夜どうなったかは火を見るよりも明らかだが、彼は睡眠中に殺されてしまい、杖も何者かに渡ることになる。

 

その後、杖は人から人へと渡っていくことになるのだが、作中ではシリーズ通しての悪役であるヴォルデモート卿がその杖を手に入れる。

歴代の杖の所持者は作中において登場するわけではないが、その名前が出た人物についてあげていこう。

 

・悪人エメリック

ニワトコの杖の持ち主としてはアンチオクに次いで2番目に名前が出てくるのが悪人エメリックである。彼がどのように杖を手に入れたかは不明だが彼の以前にも所有者がいたと見られている。中世初期のイングランドにて彼は悪行の限りを尽くしたという。

 

・極悪人エクバード

エメリックを決闘にて惨殺しニワトコの杖の所有者となった人物。杖を手に入れた後については不明だが、長生きはしなかったといわれている。

 

・ゴデロット

エクバードの約一世紀後に杖の主人になったとされる。彼は自らの息子であるヘレワードに殺害されてしまう。

 

・ヘレワード

ゴデロットの息子で、彼の次に杖の所持者となった。彼は杖を盗んだのち父を地下室に閉じ込めてそのまま殺害したという。

 

・バーナバス・デベリル

杖の所持者の名前は、ヘレワードの後再び不明となる。再び歴史上に現れたのは18世紀初めである。

バーナバス・デベリルはニワトコの杖を手に入れた男であり、イギリスを恐怖支配したといわれている。彼は恐ろしい魔法戦士であると称されたが、流れからわかる様に彼も殺されて杖を奪われることになる。

 

・ロクシアス

バーナバスの後にニワトコの杖の主人となった魔法使いである。彼は杖を「死の杖」と名付け、それまでの杖の所有者と同様に、自分に対立する人間には容赦なく杖を振るったという。彼もまた殺されて杖を奪われるのだが、彼を殺したといわれる人物の候補は多く、彼の母親もその中に含まれているという。

 

・アーカスもしくはリビウス

ロクシアスの後にニワトコの杖の所有者となった人物は明確にはわかっていないが、作中ではアーカスかリビウスどちらかの魔法使いが手に入れたといわれている。どちらが手に入れたかは、たびたび研究者たちの議論の対象になり、その後の杖の所有者の名はまたもや不明となる。

 

作中にて詳しく描写される所有者

・マイキュー・グレゴロビッチ

時は流れて、具体的な時期については不明となっているが、20世紀になった時点において、ニワトコの杖は杖作りマイキュー・グレゴロビッチの元にあったとされており、彼は杖がかの伝説の杖と知ると、その能力を複製できないかと杖を研究し始めた。彼が自らその杖について吹聴したのかはわからないが、オリバンダー翁は杖作りの間では彼の元にニワトコの杖があるといった噂が立ち始めたと述べている。そしてとある夜、その噂を聞きつけたのか、ある若者がグレゴロビッチの仕事場に忍び込み、彼に失神呪文を浴びせたうえで杖を奪っていった。その後古い噂を聞きつけたのであろうヴォルデモート卿に杖の在り方を問いただされ、杖を持っていないことがわかるとヴォルデモート卿に殺されてしまう。

 

・ゲラート・グリンデルバルト

グレゴロビッチから杖を奪ったある若者が、ゲラート・グリンデルバルトである。彼はたびたび過去の恐ろしい闇の魔法使いとして名前が出ていたが、彼はニワトコの杖だけではなく「死の秘宝」を求めていたと作中にて明かされる。第七巻「死の秘宝」では、ダンブルドアの過去が明かされ、彼の優れた人格がどのように形作られていったかが描写される。グリンデルバルトとダンブルドアの友情といざこざは原作に説明を預けるが、彼はダンブルドアと決別したのち死の秘宝の一つであるニワトコの杖の在りかを知り、杖の忠誠を得た上でグレゴロビッチから杖を奪い取った。グリンデルバルトの梟雄としての活躍は外伝「ファンタスティックビースト」にて詳しく描写される。

作中の1945年グリンデルバルトの権力はヨーロッパじゅうにおよび、イギリスにその手が伸びんとしたが、かつての友人であるダンブルドアとの、後に伝説的な決闘といわれる対決にグリンデルバルトは敗れ、杖もダンブルドアに渡ることになる。ダンブルドアは彼を殺さずに、彼の作った監獄であるヌルメンガートに収容した。だが、彼もニワトコの杖を求めるヴォルデモート卿に殺されることになる。

 

・アルバス・ダンブルドア

かつての友との決闘により、彼はニワトコの杖の主人となる。それまでの主人とは異なり善のために使われたのは、各作品を見れば明らかである。ダンブルドア自身の能力が優れているのか、杖が彼の善性に同調しているのかは不明だが(両方だろうが)、彼はたびたび強力な魔法を行使している。例としては、贈り物として永久に燃え続ける炎を灯す、エリートの魔法使い4人を一瞬で失神させる、魔法省にてヴォルデモート卿・死喰い人と戦い、捕縛もしくは撃退する、亡者の大軍を炎の嵐にて追い払うなどしている。

「謎のプリンス」にてダンブルドアは自分の死期を悟り、憐れなマルフォイがヴォルデモート卿の命で自分を殺す任務についていることを知る。ダンブルドアはマルフォイに人殺しをさせずにヴォルデモート卿を満足させるため、時期が来たらスネイプ先生に自分を楽に死なせることを求めた(スネイプは最後には従ったものの反対をしていた)。ダンブルドアの計画ではスネイプが自分を介錯し、杖の忠誠心をそのままにすることで、杖の血塗られた歴史を終わりにしようということであった。

 

・ドラコ・マルフォイ

「謎のプリンス」にてマルフォイはヴォルデモート卿の命令でダンブルドアを殺そうとあらゆる策を講じていたが、どれも失敗に終わる。第六作「謎のプリンス」終盤に、彼は死喰い人達の援護を受けて、天文台の塔にてダンブルドアを武装解除する。彼が殺人を躊躇する中、スネイプが現れてダンブルドアを死の呪いで殺害した。杖は塔から落ちており、その後ダンブルドアの墓に亡骸とともに収められた。先述したダンブルドアの思惑とは裏腹に、杖の忠誠心はマルフォイに移ることになる。彼は自分がニワトコの杖の忠誠心を得たことに気づいていなかったものの、無自覚だったがゆえに殺されることはなく、最後まで生き残ることができた。

 

・ヴォルデモート卿

ヴォルデモート卿が持っていた杖は「イチイの木に不死鳥の尾羽根」の杖である。この杖はオリバンダーが作成したもので、ハリーの「柊と不死鳥の尾羽根」の杖とは、同じ不死鳥から素材が採られた「兄弟杖」と説明がなされる。ヴォルデモートはオリバンダーが作った杖を気に入っていた。だが第四作「炎のゴブレット」におけるハリーとの決闘で杖同士の感応現象が起こり、その結果ハリーを逃がしてしまう。その後、彼はオリバンダーを捕らえ、拷問し「兄弟杖」のことを知るとハリーを殺すために別の杖を求めることになる。

 「死の秘宝」序盤にヴォルデモートはルシウス・マルフォイの杖を借り、ハリーをイングランド上空にて追い詰め止めを刺そうとした。が、ハリーの杖に借り物の杖を破壊されてしまう。他の杖を使えば感応現象は起きないと言われていたため、彼はオリバンダーに怒り、再び拷問し彼からニワトコの杖の存在を聞き出す。彼がかの伝説の杖のことを知らなかったとは考えにくいが、事実として彼は死の秘宝の存在を信じていなかった(分霊箱にしていたが)。彼は歴々の闇の魔法使いが持っていたという杖を自分が手に入れれば、ハリーを滅ぼすだけではなく、史上最強の魔法使いになれると野望を抱き、ニワトコの杖を探すことになる。先述したように、ヴォルデモートはグレゴロビッチとグリンデルバルトに杖の在りかを聞き、彼らの話や態度(彼は心が読める)から、杖の最後の所持者はダンブルドアであると当たりをつける。彼はホグワーツにあるダンブルドアの墓を暴き、ニワトコの杖を手に入れた。

本文の「杖は新しい主人に仕える準備ができたのだ」という旨の文章からわかるように、ヴォルデモートは杖の忠誠心をを得ていたわけではなかった。彼は魔法の杖に関しては疎く、またその杖の血塗られた伝説から、杖の主人になるためには、前の主人を殺さなければならないと勘違いをしていた。そのため運のないことに、ダンブルドアを介錯したスネイプは殺されることになる。

ヤケクソ二人

・ハリー・ポッター

「死の秘宝」中盤にてハリー達3人は死喰い人に捕まり、マルフォイ家の地下牢に閉じ込められてしまう。自身の杖は折れており、ハーマイオニーは拷問され、「姿くらまし」もできず、絶体絶命かというところに屋敷しもべ妖精のドビーが彼らの脱出の手助けをする。その脱出の過程でハリーはドラコの手から杖を奪い取った。先述したように、ニワトコの杖の忠誠はダンブルドアからドラコに移っていたが、ハリーがドラコより彼のサンザシの杖を忠誠心とともに奪った時点で、ニワトコの杖の忠誠心はハリーに移った。このことが物語終盤にて、ニワトコの杖を持ったヴォルデモートを倒す要因となる。ニワトコの杖はドラコがハリーに負けたことを察していたがゆえに、ヴォルデモートが杖を使用しても十分な力を発揮しなかったという。

 ハリーはヴォルデモートを倒し、名実ともにニワトコの杖の主人となる。だが彼は、ニワトコの杖を使おうとは思わず、旅の途中にて壊れた自身の杖である柊と不死鳥の尾羽根の杖をニワトコの杖にて修復すると、ニワトコの杖をダンブルドアの墓に返すことに決める。なお映画版では、ニワトコの杖を念入りにへし折り放り投げている。

まとめ

シリーズ最終章である「死の秘宝」では、一巻から存在していた謎に対して答えを出すだけではなく、原作者の言いたいことであろう「死」に対する意識をわかりやすく示している。

「ニワトコの杖」は例え誰にでも勝てる力を持っていようとも、死を打ち負かすことはできないことを言いたいのであろうが、そこに「杖の忠誠心」という設定がそばにあることにより、その杖にかかわる登場人物の心情がより際立つように見える。

特に物語を最後までよんで、スネイプ先生のことを好きになった人は多いのではないだろうか。

 

ハリポタシリーズの魔法の杖はファンタジーにおける見栄えのよさだけではなく、杖と対になる所有者のキャラクター性を際立たせている。

設定によれば、杖に用いる木や芯材とその人柄や能力には因果関係があるようだ、納得できる杖と魔法使いの組み合わせもあれば、意外な組み合わせも存在する。

そんな設定を気にしながら、物語を読んでみると面白いかもしれない。

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